いつでも「逢える」ように


プロフィール

松澤哲平(まつざわ・てっぺい)

有限会社池尻石材工業でスタッフとして勤務。

個人事業主としてホームページ制作のお仕事をしている中で現在の会社に出会い、スタッフとして関わることに。お客様のご依頼により、永代供養・納骨・お墓掃除などに取り組む。また、終活について参加者と一緒に考えるセミナーや、永代供養やお墓じまいにまつわる正しい情報を一般生活者に伝えるセミナーを不定期で主催している。

現在は、ヨガ教室開業支援「イエデスタ」も手がけている。


最初に松澤さんのお人柄に触れておくと、自分にとても正直な人だ

自分の素直な感情を知った時に、それを誤魔化さず素直に認め、なぜ自分がそう感じるのか自分と向き合う

 

石材屋で、永代供養や納骨のお仕事をしている松澤さんに取材をする中で、亡くなった人に対して私たちが心の底に抱えている素直な感情を、松澤さんは真っ直ぐに見つめていることが分かった

さまざまな事情を抱えながらも、亡くなった方に向き合おうとしている一人一人のお客様の想いに、松澤さんは丁寧に寄り添っている

大切な人とゆっくり向き合える

この日は天候が悪く雨と風も激しかったが、納骨式があったため、その準備とお墓掃除をするところから始まった

頻繁にはお墓まで足を運べない人がたくさんおり、その人たちの代わりにお墓掃除をしている

以前、僕もお手伝いをしたことがあるが、しばらく放置されたお墓の周りに生えている雑草を抜く作業は、かなり大変だ

約1時間にわたる掃除を無事に終えた後、納骨式を迎える女性が来られたが、綺麗になったお墓を見て、すごく喜んでくださっていた

 

 

僕は、祖父や祖母はまだ健在なので、小さい頃に親戚のお墓参りに同行して以来、お墓参りを経験した事がない

そもそも「なぜお墓参りが必要なのか」…とても素朴な質問から投げかけてみた

 

お墓の前でお祈りをする時は、自分にとって大切な人と会える瞬間

お墓そのものが大事ではなく、お墓の前で手を合わせる時間が大切

悩んだときに来て、亡くなった人や自分自身と向き合う時間にもなる

 

その言葉の意味は、納骨式の間、目を閉じてじっと手を合わせ続けていた女性の姿から、ひしひしと伝わってきた

そんな大切な瞬間を綺麗な状態で迎えることができるように、松澤さんは依頼者の代わりに、細かいところまで丁寧にお墓を掃除している

遠方に住んでいるため、しばらく手入れがされていなかったお墓の様子

綺麗な状態になり、これから納骨式を迎える女性に喜んでいただいた


1つのお墓をめぐる様々な想い

納骨式があったお墓は、神戸にある関西で1番大きな墓地だった

 

ここでは、誰のものか分からなくなったお墓や手入れがされなくなったお墓など、いわゆる無縁墓地が年々増えてきているとのこと

家族同士で連絡が取れなくなったり、供養に対する意識が希薄化していったりするに連れて、こうした問題が増えてきているらしい

また、高齢者が増えてきて、体力的にお墓参りができなくなり、そのまま放置されてしまうことも原因の一つだ

 

そんな中、せめて自分の亡くなった家族に対してできることをしようと思い、永代供養を考える人も増えてきている

永代供養とは、お墓参りをしてくれる人がいない、またはお墓参りに行けない人に代わって、寺院や霊園が管理や供養をしてくれる埋葬方法のこと

少子高齢化の進行によって、生前から永代供養を望む人も増えてきている

 

しかし、そこにも大きな問題があった

親戚や家族との話し合いの中で、代々継いできたお墓を壊すのはもったいないといった意見や、永代供養なんてけしからんという考えで、なかなか話が進まないこともあるらしい

また、話し合いに関わる人が多いと余計に揉め事になり、結果的にお墓が放置されてしまう

さらに、永代供養をしようと思っても、手続きの分かりにくさに断念してしまう人もたくさんいるとか…

 

こうした現実をたくさん目の当たりにしてきて、歯がゆく感じた松澤さんは、手続きの仕方や書類の書き方を一から丁寧に教えてあげるなど、永代供養を考えている人に対して人一倍手厚くサポートしている

代々継いで来たお墓を自分が終わらせてしまうことに、誰しも罪悪感に近いものを感じていることも多いようだ

だからこそ、たくさん悩んで墓じまいと永代供養を決断された依頼者の想いを尊重しており、嫌な思いしてほしくないと、松澤さんは思っている

 

墓じまいは、決して悪いことではない

自分の親を大事に思うからこそ、ただただ放置するのでは無く、別の場所で安らかにいられるように、自分ができる範囲のことをしたいと思う

そんな依頼者の想いを、松澤さんは大切にしたいと考え、無事に永代供養を終えるまでお客様に寄り添っている 

お客様に安心していただける工夫を、スタッフに丁寧に伝える

納骨後も綺麗な状態の骨で残せるように、中の環境を確認する


安心して任せていただけるように

納骨式を終え、松澤さんが勤めている池尻石材さんにお伺いした時、さらに松澤さんのお人柄が伺える場面があった

それは、お客様からご相談があり、見積書を送る封筒を準備していた時のこと

封筒の中には、もちろん会社のパンフレットなども入れるが、それに加え、松澤さんは自分がどんな人なのかを紹介する自己紹介のチラシを入れていた

なぜそんなチラシをわざわざ入れているのだろうか

 

たとえ自分でお墓掃除ができない状態であっても、そんなに簡単に自分の家のお墓を、快く他人に任せることはできないと思う

それなのに、ネットやチラシを見ても価格やサービス内容しか見ることができないのは、任せる立場からすると不安に思うのではないだろうかと推察している

自己紹介のチラシでどこまで伝わるかはわからないが、できる限りの情報をお伝えして、この人ならお墓を任せることができる、とお客様に安心して選んでもらいたい

 

お客様の気持ちに丁寧に寄り添う松澤さんは、相手の心を気遣い、妥協せずに細かいところまで工夫している

松澤さんがお客様にお送りしている、お手製の自己紹介のチラシ


また、松澤さんは、お寺のお坊さんが集まるイベントに定期的に出席し、彼らとお話する機会を作っている

その理由は、葬儀にまつわる仏教の教えの意味やお祈りしてくださるお坊さんの想いを、遺族の方に知ってもらうためだ

日本で古くから続いている葬儀の風習には、亡くなった方が安らかに眠れるように、また、残された遺族が救われるように、一つ一つにきちんと意味がある

しかしながら、供養に対する希薄化が進む中、それらの意味を知る機会も少なくなっており、「どうしてこんなことをするのだろう」と供養の過程に疑問を持つ遺族も増えている

 

お坊さんとお話をすることで松澤さん自身も日々学んでおり、仏教や儀礼の意味など、何のためにこの過程が必要なのかをお客様に伝えている

実際にお客様との会話の中でお話しすると、「そんな意味があったんですね、知れて良かったです」とホッとする方もいらっしゃるそうだ

また、永代供養の話など、「こんなことをしてもバチは当たらないのだろうか...」と心配になる方に対しても、松澤さんがお坊さんとの会話から学んだことをお伝えし、きちんと供養されていることを知ってもらう

 

こうした心配りも、丁寧に遺族の思いに寄り添い、安心して亡くなった方と向き合ってほしいという松澤さんの想いの表れだ

家族との会話の大切さ

高齢者の方がどんどん増えていく一方で、それを支える若者の数は減っていき、無縁墓地の増加やお墓に対する無関心など、今後ますますお墓に関する問題が増えていくだろう

そうしたことがないように、家族が亡くなった時にどうするかについて、松澤さんは、ご自身と同世代の30代40代のうちから親と話し合っておく必要がある、と考えている

 

しかし、そうした世代の素直な感情としては、「どうして今からそんなことを話さないといけないのか」「そんな話を家族とするなんて、なんか気が引ける」といった気持ちになる人が大半だろう

ところが、いざ自分の大切な人が亡くなり、残された自分が手続きや手配などしなければいけない時に、どうしたら良いか分からないまま手続きを終わらせてしまうのは、それこそ罪悪感を抱き、辛い気持ちを引きずることになってしまうのではないだろうか

お墓に対してネガティブな感情を持つお客様の、素直な気持ちに寄り添う松澤さんだからこそ、お墓に関してだけではなく、これからの暮らしについて家族と話し合う機会をぜひ作ってほしいと感じている

生活者が理解しておくと良いことを伝えるセミナーも実施

この日の夕方も、いろんな宗派のお坊さんが集まるイベントの出席した


納骨や墓じまいは、人生のうち何度も経験するものではない

 

しかし、意外と手続きがややこしかったり、親族との問題や自分の家族のお墓に関して知らないことがたくさんあったりして、心が折れそうになってしまうことがある

 

そんな時こそ「僕に頼っていただきたい」と、松澤さんは語る

 

 

大切な人を失って悲しい思いの中、お墓に関するしがらみで辛い思いをされていながらも、亡くなった家族と正面から向き合おうとしている人に、松澤さんは最後まで伴走する

 

だからこそ、亡くなった家族と過ごす大切な瞬間のために、安心して松澤さんにお墓を任せることができるのだろう


ライタープロフィール

佐比内優太(さひないゆうた)

 

神戸大学工学部4年生。

社会人になって働く前に、「価値づくり」とはどういうことなのか、自分はどういう生き方をしたいのかを追究したいと思い、現在休学中。

バーテンダー、カメラマン、メディア、ライター、e-Sports、教育など、自分の興味・関心があることに、幅広く取り組んでいる。