カメラがつなぐ絆


プロフィール

田中芳香(たなか・かおり)

写真撮影&教室「NAPSNAP」を運営

奈良県生駒市生まれ→大阪→生駒市在住(Uターン)

1女1男の母。大学商学部卒→デザイン事務所時代に写真とイラストの仕事をし始める。デザイナーの仕事から予定外に遠ざかる。

出産をきっかけに子連れで参加できるママ向けのカメラ教室「ママカメラ教室」をスタート。最近ではパパ向けの教室、大人女子カメラ教室、マタニティさん向け教室、子どもカメラ教室、起業家向けカメラ教室なども開催。子育てサークル、学校、産婦人科、公的機関、企業様からの依頼も多い。

主婦であり、母であり事業主である目線から人の輝きをカタチに変えるカメラマンを目指して日々奮闘中。


人はなぜ、写真で何かを撮りたいと思うのか…「大事なライフイベントの様子を残しておきたいから」「かわいい写真を撮りたいから」などの様々な理由があると思う

そうした写真に写るものを、「過去の思い出」とするならば、田中さんが写すものは、「未来への期待」だというのが今回の結論だ

 

田中さんが何を想いながらカメラを構えるのかを今回の取材で掘り下げて気づかされたことがある

撮る先にあるものとは…

この日の田中さんは、お子様がいるお母さん向けのカメラ教室を公園で実施されており、お母さんたちが子どもたちを連れて参加されていた

 

全然お母さんの言うことを聞かない子

おとなしいが、なかなか笑ってくれない子

すぐに泣いてしまう子

 

自分にもこんな幼少時期があったのかと思うと、その光景がとても微笑ましく思えたが、お母さんたちは、子どもたちの笑顔の瞬間を撮ろうとするあまり、必死の形相でカメラを向けていた

 

一方、レッスンの最後に、お母さんと子どもたちのツーショットを、田中さんが撮影する時間中、田中さんはずっと満面の笑顔だった

 

笑顔でレンズを覗く田中さんはとても楽しそうで、初めは撮影を嫌がっていた子どもたちも、次第に笑顔に変わり、仲良くお母さんと一緒に写真を撮るようになっていた

 

「もちろん撮影は楽しいけど、やっぱり撮影する人のワクワクや気持ちって、子どもたちにも伝わるんです」という田中さんの何気ない一言がとても印象的だった

 

お母さんと子どもたちの思い出に残る写真を撮るために、まずは自分が楽しんで撮影している田中さんの笑顔がとても優しいものだった

春先で天気も良く、ゴザに座って撮影会をしていた

カメラ設定を教える田中さん


また、このレッスンで使用しているオリジナルのテキストにも、田中さんらしさが垣間見られた

カメラの扱い方や撮影方法なども説明はもちろんのこと、それに加えて、スマホでうまく撮る方法や、Foodieなどの加工アプリで撮る方法も書いてある

カメラマンが、スマホやアプリに頼った撮影の仕方など、カメラ以外の身近なアイテムを使った楽しみ方も気軽に教えてくれることに、意外性を感じた

 

一般的なカメラ教室では、カメラの種類や機種によって、受けることができるレッスンが限定されていることが多いが、田中さんは、すべてのカメラに対応して教えている

 

 

彼女が、こうしたレッスンを通じて伝えたいのは、カメラの腕が上達することだけでなく、いろんな場面を切り取り、写真におさめることによって、ご自身の日々の暮らしの中で、小さな豊かさの気づきと築きを感じ取ってもらいたいという願いだった

 

例えば、普段カメラで撮影していると、季節の移ろいを感じたり、日常の変化に気づきやすくなったりする

それがきっかけで、週末にお子さんや家族と一緒に出かけることや、会話をするきっかけになる

田中さん自身も、普段からカメラで撮影する中で、「我が子の成長を感じ取り、それを見て家族と会話が弾むのが楽しみ」とのこと

家族ごとに自由に移動して撮影

はしゃぎ過ぎて転んでしまう子供達もたくさんいる


さらに、田中さんが惜しげもなく自分の技術も教える理由が、もう一つある

 

自分で何を伝えたいのかを意識したカメラ撮りができるようになると、プロカメラマンなどに大切な瞬間を撮影してもらう時、自分がどんな風に撮ってもらいたいか、正しくコミュニケーションを取れるようになるという点

 

家族写真を撮ってもらったり、ホームページに載せる写真を撮ってもらったり、写真を撮る目的次第で、カメラで捉えてほしいことが大きく変わってくる

目的を持って写真を撮ったことがある経験があれば、自分が撮られる立場になった時に、相手にその意図を、自分の言葉で伝えることができるようになる

その結果、撮る人と撮られる人が、同じ目的を共有して撮影でき、最高の写真ができあがる

 

「写真はあくまでコミュニケーションツールです」という言葉に込められた田中さんの想いが、ひしひしと伝わってきた

映える未来のワクワク

田中さんは、カメラマンとしてのお仕事を始めた頃は、マタニティフォトの撮影が中心だった

その時しか残せない思い出を残したいと思って、撮影しに来てくださる方が多かったようだ

 

撮影の間、田中さんは、いろんなことをご夫婦に問いかける

 

今はどんなお気持ちですか?

お子様が生まれたらどんなことがしたいですか?

どんな風に育って欲しいですか?

 

初めは撮影を楽しみに来られていたご夫婦の表情も、将来生まれてくる自分の子供に思いを馳せると、徐々に「母親」の顔と「父親」の顔になっていき、まさにその瞬間を、田中さんはカメラに収める

 

もうすぐ生まれてくる自分たちの子供のことを、改めて夫婦が一緒に考えることができる時間に変えていくのも、田中さんのお仕事なのだなと感心させられた 

撮影を通して子供達とすぐに仲良くなる田中さん

レンズ越しに常に笑顔を向ける


そして田中さんは、ご高齢の方を対象にした、「ストーリーズ」という新たなサービスを始めようとしている

 

テーマは、「大人の肖像写真」

 

歳を重ねるにつれて、自分が写真を撮られる機会は少なくなり、代わりに孫の写真を撮ることが増えてくる

最後に撮った写真はもう何年も前のもので、今の自分とは少し違っていることもある

 

そんな方が、改めてゆっくり今までの人生を振り返り、その人の人生の集大成を写し出す機会を、田中さんは作ろうとしている

 

実際には、スタジオでカメラに向き合いながら撮影するだけでなく、普段お仕事や趣味の活動をされている様子を撮影し、その人らしさが出ている瞬間を、田中さんはしっかりとカメラに収める

 

そうしてできた写真には、何年も前に最後に撮った写真よりも、その人らしさや、人生の深みが出ている

 

自分の新たな一面を知り、また、家族の人と会話するきっかけになってほしいというのが、田中さんの想いだ

田中さんがお父さんを撮ったものが「ストーリーズ」のパンフレット表紙に


「ストーリーズ」には、もう1つ大切な目的がある

 

田中さんは、このサービスを、まずは40代50代の方に知ってもらいたいと思っている

なぜなら、「ストーリーズ」が、親と子供を繋ぐ、ライフイベントの1つになってほしいと考えているからだ

 

気づかないうちに年月が経ち、両親と会話をする機会も減ってきている方も多いはず

そうした方が、「ストーリーズ」を通して、疎遠になっていたご両親と会話をするきっかけが生まれたり、撮影中に自分の親が何かに打ち込んでいる姿を側で見て、家族の知らなかった一面を知る機会になったりしてほしい、と思っている

 

田中さんも、ご自身のお父さんが子供達にサッカーを教えている姿を撮影し、それをパンフレットにも載せているが、撮影の時は、父親の新しい一面も見ることができて、とても嬉しかったそうだ

 

また、実際の依頼の中で、お客様のご両親が仕事をされている様子を撮影しに行った時も、親子で楽しい時間を過ごせたことに、とても感謝されたとのこと

 

「ストーリーズ」というサービスがあることで、最近減っていた家族間のコミュニケーションが、また徐々に生まれていくことをもう1つの目的に見据えていた

そしてその写真を見て、「次また家族みんなで撮ってもらおう」「来年はどんな表情をしているかな」と、未来にワクワクしていただけたら嬉しい、と田中さんから優しい笑みがこぼれた

子供達にサッカーを教える様子の撮影の中から「想い」も引き出す


1枚1枚に込める想い

僕も先日、田中さんに「今」の自分を撮ってもらった

自分の写真を見るのは恥ずかしかったが、自分ってこんな表情しているんだと気付いたり、来年はどんな表情になるのだろうかと期待したり、いろんな発見やワクワクがあった

 

田中さんが撮る写真は、その日その瞬間のありのままの自分を映し出すと同時に、1分1秒先の未来に繋がる写真を撮っている

その心意気は普段の教室でも同じで、カメラがあることで、生徒さんそれぞれの日常で何か変化が生まれるきっかけになることを、田中さんは切に願っている

 

そうして生まれてきた写真は、家族とのコミュニケーションに繋がったり、自分のことを改めて振り返ってみたりするきっかけになり得る

 

そのきっかけを引き出すのは、単に上手に撮ることだけではなく、その先にある暮らしを大切にしている田中さんだからこそ、できることなのだろう 


ライタープロフィール

佐比内優太(さひないゆうた)

 

神戸大学工学部4年生。

社会人になって働く前に、「価値づくり」とはどういうことなのか、自分はどういう生き方をしたいのかを追究したいと思い、現在休学中。

バーテンダー、カメラマン、メディア、ライター、e-Sports、教育など、自分の興味・関心があることに、幅広く取り組んでいる。